科学の夢、少年の悪夢。
こういう子供向けSFアニメがあった。
あった、というか、現在も放映中である。
絶滅すべき異星人だと思い込んでいた敵が、実は人間だということがわかる。
主人公の少年の眼前で、戦闘に巻き込まれ、惨たらしく死んでいくヒロイン。
少年たちが属している連邦政府は、彼らが死闘を繰り広げる間は何の援助もしてくれず、挙げ句、敵要塞の破壊という戦果は取り上げられ、彼らのリーダーは反逆者として投獄される。
(報道されるのは、『連邦政府の英断による、敵要塞への攻撃と破壊』)
戦争はその後何十年も続き、少年は、その連邦の軍人になる。
おいおい、コミカルなキャラクターの割には、ずいぶんと重たい話じゃないかよ、いいのかなあ、こういうのを子供に見せて。
……などと思いながら、自分がまだ少年だった頃に見ていたアニメのことを思い出す。
勝ったり負けたり裏切ったり裏切られたり殺したり殺されたりだましたりだまされたり母なる地球を守れたり守れずに人類もろとも全滅したり勝ったはいいけど主人公が廃人になったりせっかく守った地球の人々から地球を脅かした害悪とみなされたり。
なるほど。
ロボットの合体や変形やビーム兵器や必殺技の合間に、子供はこういうものを観ていたのか。
友情や努力や勝利の隙間に、ぼくらはこういうものを観ていたのか。
人間の世界に潜む闇のようなものが、ふと覗けてしまう瞬間。こういうのって、子供向けSFアニメだからこその醍醐味であり、怖さでもあるのかもしれない。
風にひらめくカーテンの奥に、なにか真っ暗なものが見えてしまう瞬間、とでもいいましょうか。別にそんなものを見たくはなかったんだけど、一度見てしまうと視線を外すことができない。さっきまで、そこは普通の風景だったのに。
と、録りためた『機動戦士ガンダムAGE』を観ながら、ぼんやりとそんなことを考えていたのであった。